おもしろ日本美術2 第二回
ヨーロッパを魅了した「KAKIEMON」の逸品
色絵双鶴文輪花七寸皿(元禄盛期)

柿右衛門色絵双鶴輪花皿

マイセン窯の倣製品
中でも、ヨーロッパに輸出され、かの地で一大ブームを起こした柿右衛門様式磁器の、その上手のものは、濁手(にごしで)と呼ぶ米の研ぎ汁のような乳白地の温かみのある素地が特徴。貞享頃の完成と見られ、酒井田柿右衛門家伝来の「土合(つちあわせ)帳」に記されるように、泉山の白土、白川の山土、岩谷川内の石なる三種の混合で、近年、同家の十二代、十三代が復元に成功。比率は6:3:1と解析。鉄分などの不純物の除去、微細・均一な粒子を求めての水簸(すいひ)沈澱法による選り分け。それぞれの濃さを揃えての調合。入念な足こね(踏みと寄せ)、手こねの繰り返しによる空気抜きと粘り増強等々と、手間をかけ磁土を精製。ねんごろなろくろによる成形作業ののち、乾燥を経て、900度ほどで素焼きをなす。柞灰(ゆすばい)を主とするほぼ磁土と同成分の釉薬に潜らせ、息で吹き飛ばすなど心して薄くかけるという。1300度超の本焼きではのぼり窯の中の位置にこだわり火の回りに細心の注意を払う(二日焚き四日冷ます)。上絵付は赤・青・黄・萌黄を基調とし茶・紫を時に加え、温かみのある濁手素地に映える華麗な色絵を形成。いわゆる古九谷様式の沈んだ色合いに比べ目に鮮やかな明るく豊潤な色合いで、線描き・ダミのマッチングの妙も見どころである。850度前後での赤絵窯でガラス質となった釉薬の被膜の上への焼付。さらに金彩(一時は銀彩も)を重ねて焼き付けることも多い。
柿右衛門濁手の色合い・肌合いにも制作年代によって微妙な変化がある(柿右衛門窯の他にも脇窯や一般の窯でも類似品を生産)。古九谷様式五彩手の上手の小皿に見る白の地肌は、くすみのある白い素地で濃いめの色相に合ったものであるが、柿右衛門様式では明るい赤の開発と新たな色相の上絵具に対応する地肌の温かみが求められた。

マイセン磁器美術館蔵黄地蓋付壺
上絵具の調合は酒井田家の一子相伝。赤の絵具は焼ベンガラで、調合する中で濃い順に描黒、赤カバ、上絵ダミ用、と取り分けて使用。景徳鎮のキャラック様式色絵に範をとりながらもより和様化をなした意匠。左右非対称、余白の美、土型による端正な器形、口縁に銹釉の口紅等が特徴。並行して濁手でない青みのある白磁に染付(釉裏)上絵付け(釉表)併用の色絵も制作、「染錦」と呼ばれる。
本品は、元禄盛期の代表的柿右衛門色絵皿。上絵付の赤絵の鮮やかで明るく上品な発色、さりげない金彩、周縁の精緻な朱色の唐花模様とまれに見る上手品で、型を使った巧みな輪花の成形と、薄くて軽いあがりの良さ、錆釉による口紅のしまりの効果等々、完成度は高い。梅鶉を宙空と地上で呼応しあう鶴のつがいに置き換え、構図のまとまりも秀逸である。その双鶴の花鳥画パターンはマイセン(ドレスデン美術館に倣製品収蔵)はじめ18世紀のヨーロッパ磁器にさかんに取り込まれ、東洋趣味人気図柄として定着している。(美術評論家・文星芸術大学長)
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- 第十五回 料理を取り尽くすと爽やかな薄青の尺五皿から牙をむいた虎が - 染付花唐草虎文大皿(藍柿右衛門早期)-
- 第十六回 余白の白さに映える定番の吉祥モティーフ - 色絵双鳥松竹梅文七寸皿 -
- 第十七回 柿右衛門は染錦手でも違いを示す - 染錦粟鶉籬籬文八角小皿 -








