アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「BIOS電子版」No.36

文星芸術大学 非常勤講師 工芸論・西洋磁器絵付け-川島 亮子-宇都宮市は『百人一首』発祥の地

家族の食卓に百人一首のお皿を

川島さんは宇都宮市に生まれ育ち、大学も宇都宮大学教育学部(国語科)を卒業、教師として地元の子どもたちの教育に携わってきた。現在、文星芸術大学(上野憲示理事長・学長/宇都宮市)にて西洋磁器絵付けの講師として携わる傍ら、「アトリエ・ギャラリーBritish Rose」を主宰、展示会などを通して他分野のアーティストたちと地域の文化向上のために貢献している。

また、地元宇都宮市にゆかりのある「百人一首」に対する愛着があり、子どもの頃から書道も習っていたことから、絵(文字)付けを通して広めたいと願っている。

「この夏に東京の『丸善』で展示会を催したときに、この百人一首のお皿を展示しましたら、とても反響がありました。展示会後も、『私の好きな百人一首を書いてください』と、注文をいただくなど人気がありました。東京で人気があるなら地元の宇都宮で展示したら皆さんに喜んでもらえるかなと、今回(2016年)、宇都宮市内のホテル内ギャラリーで展示してみました。自分の好きな歌を探しながら『この歌、知ってる』『この歌が好き』などと言って購入される方がいますが、このお皿で家族みんなで楽しみながら食事ができるのではないかなと思っています」

家族で楽しむ食卓で子どもたちも百人一首に自然に愛着がわくのではないかということである。それだけに家族中で親しめるように、百人一首の文字は変体仮名ではなくて、誰でも読めるようなアート文字を用いて書いている。また、川島さんは平安時代から伝わる日本の遊びで有名な「貝合わせ」をモチーフに、上の句と下の句をそれぞれ書いた皿を二枚一組にして百人一首を書いている。

自宅にあるアトリエで

宇都宮市重要文化財「旧篠原邸」で「百人一首」の作品展示会を開催(2017年10月)

百人一首の作品

マイセンの磁器に魅せられ、やがて水墨画風な絵付けへ

「私は絵が好きでこの絵付けの道に入ったのではなくて、マイセンやウェッジウッドなどの器が好きだったのです。このような絵を自分で描いてティータイムができたらどんなにかいいかなと思いました。ドイツの本場マイセンから来日する講師を迎えて講習会を開くマイセンの絵付け教室に通いながら、磁器の絵付けを習得していきました。金や銀は絵付け専用のものがあり、絵の具も専用のものがあります」と話しながら、展示されている作品を説明してくれた。

「有名なコペンハーゲンのフローラ・ダニカと同じ形の日本製の白磁に出会うことができたので、同じような描き方で絵付けをしています。ロシアの女帝エカテリーナのためだけにデンマークが送り続けたと言われています。また、ヘレンドも好きなのでその技法も学んできました」と、長い間、西洋磁器の絵付けの世界で活躍していた川島さんは、磁器にまつわる歴史と魅力を楽しそうに語ってくれた。

「手描きの器は飽きがきませんので、みなさん大事に使っていただけますね」

しかし、食器好きから始まって習得していった絵付けも、長い間には「西洋磁器」の絵付けに対する思いの変化があったと話す。

「マイセンとかウェッジウッドなどだけではなく、日本の水墨画の描き方でさらっと描いた作品にも惹かれてきました。きちんとしたマイセンの描き方よりも自由な描き方で、いろいろなものを描いてみたくなりますね。和の器は、この描き方のほうが良いと思いました」

西洋磁器に魅せられてはじめた絵付けが、それらをベースに日本の「和」に繋がっていった。そして水墨画風の絵付けの道を経て、現在の「百人一首」の絵付け創作となった。繊細で華やかな西洋磁器の絵付けの作品の傍らに、落ち着いた和のお皿が展示されている。「現代の日本の家も、家族の食卓も、お米(和)とパン(洋)をバランスよく取り入れている時代であること」と話す。

文星芸大の学生に技術を継承させる

川島さんは文星芸術大学で講師として着任してから約5年になるという。今は、これからの日本の芸術文化を担っていく若いアーティストに、長い絵付けの歴史の中で技術を継承させている。

「今、学生たちはオールドノリタケのレディスプレートの原画になった作品をベースに絵付けをしています。オールドノリタケの世界観から影響を受けたというヨーロピアンの絵付けの作品を学生たちが文化祭(文星芸術大学「北斗祭」)で展示し好評でした」

学生たちには常に本物に触れさせて学ばせ指導している。若きアーティストを育てるためにも、「百人一首」ゆかりの地という文化のなかで、自身も新たな作品の制作を模索しつつさらに研鑽を積む川島さん、学生たちと同じように輝く瞳が印象的であった。

文星芸術大学の授業(工芸論Ⅱ)で学生たちと

上野学長の授業見学。工芸論Ⅱ(選択科目)を45名2組に分けて指導

学生たちの作品

学生たちの作品

文星芸術大学 上野憲示学長と

宇都宮大学附属小中学校の美術部(保護者)で指導

文星芸術大学 上野孝子副理事長と川島さん(上野さんの展示会で)

アトリエ British Roseで

教室で指導する川島さん

雛人形も人気がある

クリスマスの作品

オールドノリタケレディスプレートのもとになった原画

作品

作品

個展会場に宇都宮市長佐藤栄一氏が訪ねる(2017年11月26日)

川島さんの出版した著書を市長に贈呈

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(取材2016年8月20日)

アトリエ British Rose

〒320-0022 宇都宮市千波1-7

TEL:028-622-0212

営業時間:10:00~12:00、13:30~15:30

定休日:日曜・祭日

※絵付け教室の時間はご相談の上変更も可能です。