アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「伝統と文化―下野手仕事会―」No.28

八木澤 正 -竹工芸-

「竹と灯り」をテーマに竹芸に新たな道を

那須地域は昔から篠の名産地として有名でした。しかし、今は生活様式が変わり、昔のものをつくっても売れない時代です。後継者問題もあり減少していますので、今、保存するための工夫をすすめています。伝統工芸を残していくためには本当に困難な時代だと思います。

私はもの心つく頃には、父(啓造)があぐらをかいて仕事をしている中に入って、見よう見真似で竹で遊んでいました。昔は生活と仕事場が一緒でしたから、父は狭い部屋で私が寝ている枕元で作っていました。日常生活と工芸は一体でした。そのうち自然に皆さんに認められていきまして、宮内庁からも注文がくるまでになりました。父は水上勉さんに「竹人形」の関係で御紹介を受け、皇后様のバッグを4点作らせていただきました。仕事は周囲から与えられるものですから、社会的にできることがあれば何でもやるということを父から教わりました。

今、新たな竹工芸を模索して「竹と灯り」をテーマにした作品に取り組んでいます。竹と灯りを組み合わせる事で、木漏れ日のような光りの広がりが美しい椅子やテーブルなどを製作しています。日常から開放された異空間をつくり、竹の感触がわかるようにゆったりとくつろげるように編んだ作品などです。

平成25年に「大田原竹芸研究会」を発足させました。作家さんも愛好家も含めて竹工芸を広げていく足掛かりにしたいと思っています。また、国内外の個展やグループ展による作品紹介で竹工芸を広めていますが、カルチャーセンターなど数カ所の教室で教えながら、一緒に「つくる」ことを楽しんでいます。これからも若い人たちが手仕事に興味を持ち、竹工芸の伝統を継承することができるように、さまざまな努力をしていきたいと思っています。

(文:八木澤 正/下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』P72-73より)

下野手仕事会四十年之軌跡

下野手仕事会40周年記念誌『下野手仕事会四十年之軌跡』

発 行 日
2013年9月1日 第1刷発行
編   集
下野手仕事会四十周年記念誌編集委員会
発 行 人
下野手仕事会
編集・制作
有限会社 アートセンターサカモト
〒320-0012 栃木県宇都宮市山本1-7-17
TEL:028-621-7006 FAX:028-621-7083

[定価]本体2,000円+税

©Shimotsuketeshigotokai.2013.Pronted in Japan

ISBN978-4-901165-06-8

◇問い合わせ先

下野手仕事会 会長 藤田眞一 TEL:0287-93-0703

(有)アートセンターサカモト TEL:028-621-7006

八木澤 正

昭和28年、大田原市生まれ。同50年、父啓造について竹工芸を師事。同53年、八木澤竹工房として独立。中国への技術指導数度。平成13年、栃木県立美術展企画展「栃木県美術の20世紀」などで展示。同17年、栃木県伝統工芸士に認定される。同24年より宇都宮市民芸術祭審査員となる。同年~25年、韓国での竹祭りに招待作家として展示と実演。同年より大田原竹芸研究会会長。

〒324-0036 大田原市下石上1771-206

TEL:0287-29-1164

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