アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「とっておきの一冊」No.1

『「旅する蝶」のように-ある原発離散家族の物語-』

目次

放射能雲に追われて
脱 出
辿り着いた避難先
五里霧中
三つの戦争
二人の先生
再び宇都宮へ
離散生活の始まり
空 洞
数値と言葉
職場にて
負い目
ふと襲い来る虚無感
茄でガエルの話
日々募るすれちがい
赤い赤い海
キチクベイエイ
「ヌチドゥタカラ」は誰の言葉か?
ガジュマルの木の下で
「旅する蝶」それから
憂鬱と後悔と
加害者として
いまだ途上にて
参考資料
あとがき

いまだに語られていない原発避難の物語は、本書の10万倍に及びます。避難の中で命を落とした人、避難したくてもできなかった人、避難したけれども帰還した人の物語の全体は、その数倍にのぼるかもしれません。この事実の重みが、冷笑家ではない読者の想像力に働きかけることを望んでいます。書きたいことを書いた私の証言は、書きたくても書けない人々の沈黙の前では、広大な砂丘をなす一粒の砂に過ぎないからです。

2017年3月末日

                岩真 千

(「あとがき」より抜粋)


それが正しかったかどうかなんて

誰にもわからない

 

2011年3月、放射能雲に追われて沖縄へと

妻子を連れて脱出する。単身栃木に戻ってからの

5年半に及ぶ別居生活でみえてくる

避難をめぐる軋轢、いじめ、そして沖縄問題。

自主避難の理不尽が胸に迫るドキュメント。

(文芸評論家 木村朗子氏/帯文より)


著者コメント

この一、二年で、原発避難(特に母子避難)に関する本が、脚光を浴びるようになりました。しかし、当事者が自分の言葉で体験を語った本は多くありませんし、何より父親の視点から率直に避難体験を語った本は、ゼロに等しい状況です。

この事実は、日本社会の家族の在り方をよく示している、と私は思います。一見、男性優位に見えるこの国ですが、男=父親が弱音を吐いたり、くよくよと悩んだりすることは、実質上許されていません。地方に入れば入るほど、この暗黙の了解は、過酷です。

本書を書き終えた今にして思います。これは一人の凡庸な父親が、「男らしさ」から遠く離れて、家族と向き合おうとした物語だったのだ、と。


書籍情報

・書籍名:『「旅する蝶」のように-ある原発離散家族の物語-』

・著者:岩真 千

・発行所:株式会社リベルタ出版

 〒101-0064 東京都千代田区猿楽町2-8-5 千信ビル1F

 Tel.03-3293-2923 Fax.03-3293-3723

 E-mail. info@liberta-s.com

 http://www.liberta-s.com/

 振替:00180-6-14083

・価格:本体1,700円+税

・発行日:2017年5月15日

・ISBN 978-4-903724-50-8 C0036