アートセンターサカモト 栃木文化社 BIOS編集室

「栃木のステキ」No.16

美容家・ウィズインターナショナル代表取締役 河合秀郎さん

それぞれの輝齢(きれい)

「私たちの会社が今年で32年になります。みどり野店が20年、やな瀬店が14年になりました。それを記念しまして今回このような『ウィズ ビューティー フェア』を行うことになりました」

この日、みどり野店20周年を記念して催しが開かれていた。広いスペースの一角はコンサート会場となり、ピアノ原直子、バイオリン、チェロの望月夫妻がクラシックから現代音楽まで、またオリジナル音楽を演奏、脚光を浴びていた。開会の冒頭に河合さんは集まった男女約50名の来客に向けて、記念の祭典の節目にその思いを話した。

「私たちが考えていることのひとつは『輝く齢』で『輝齢(きれい)』ということです。それは例えば、40代だったら40代の輝齢が、60代だったり70代だったりの輝齢があっていいんじゃないかなと思います。それを常に私たちが考えて、お客様に提案していこうと思っています。今回もこのイベントを通して、いろいろな方とお会いしましたが、その中で年齢に関係なく輝いている女性が何人もいらっしゃいました。その方の考え方や人生観がその方の美しさになって出てきているのではないかと思いました。考え方や人生観を実際にそのまま生きているという方がいらっしゃいます。私たちはそのような方の生き方に沿うような美の提案をしていこうと考えています」

40年以上にわたって特に女性の美を追求してきた河合社長。ヘアーだけでなく身体の中からの美やエステも追求し続けてきた。「あっという間の40数年間でした」と、青春の面影を垣間見るように照れるような笑顔で語ってくれた。

パリのトップ美容界で

42年前のパリ。まだ日本人観光客も日本人留学生も少ないパリの街に降り立った。「ここでやっていく」と身の引き締まる思いであった。美容の最先端をいくパリで腕を磨いて日本に凱旋しようと飛んだファッションの都パリ。

「24歳から3年間パリで美容を勉強していました。そのお店はフランストップのファッション雑誌『ELLE 』のディレクターなどが顧客でした」

お店のスクリーンにはパリ時代の若き河合さんが写っていたが、続いてファッショナブルなショートヘアのフランス人女性が何度も映し出されていた。

「あの方が先生ですが、カットで大体その当時で3万円(日本の大卒初任給4万円前後)、メッシュとカラーで10万円位の料金でした。私など、1回のカット分の給料ももらえませんでしたが、そこで3年間勉強させていただいたのです。それでも向こうはチップが入りますから、仕事をするとチップを頂いてね、嬉しかったですね。今思えば乞食のような生活でしたが、若い人たちみんなが貧しくとも夢を持っていて、すごく明るいんですね」

パリの街に居るということ自体が感性を刺激する。歴史の重みのある美しい街の灯りや石畳みの路地やカフェテラスに心躍らせては夢を追っていた。その貴重な若き日々に感性が磨かれ豊かになる。河合さんの美の原点はこの20代の繊細な美の積み重ねから築かれていったようだ。

「同時に海外で生活することで日本の良さをすごく感じました。海外に行って初めて日本の良さがわかると思うんですね。日本にいたら日本の良さってわからないで過ごしてしまうかもしれない。海外に行ったことは僕にとって非常にいい経験だった。今の美容室本店の32年間は、お客様に支えていただいて僕の提案を受け入れていただいたから続いたことだと思っています。美容だけでいうと46年、だんだん数えられなくなるくらいです(笑)」

先ず自らの提案を実行する

「もともとは日本橋の資生堂で3年間勤務していまして、それからパリへ行ったのです。ある程度仕事ができないとフランスへ行っても全然相手にされません。『その人が何ができるのか』ということが原点ですから」

河合さんは若さの勢いで闇雲にパリに行ったのではないことがよくわかった。世界のファッションをリードする街パリに真剣に向き合って計画的に行動していた。その努力があってこそフランスの厳しい美容界から受け入れられ、居続けることができたのだ。

「僕は日本で頭皮のマッサージもやっていましたので、パリの美容室でマッサージをしたところ、先生が『素晴らしい』と褒めてくださり雇い入れていただけたのです。フランスではマッサージというと医療でやっているもので、美容室で頭皮とか肩のマッサージをしたりはしない。僕がたまたま資生堂で勉強したものが、向こうにとって大きな刺激だったみたいです。それで私は使っていただいたということです」

帰国してから数年後の32年前、宇都宮市で「With(ウィズ)美容室」をオープンさせた。パリで学んだものすべてを注いだ美容室である。「With」のロゴの下には「PARIS」の文字が!

「フランスで3年間勉強した時に自分の中でいろいろ考えることがあって、いろいろなことをお客様に提案してきました。それがなんとかお客様に受け入れられたから32年続いたと思います。でも欲張りなものですからまだまだ20年くらいはやりたいなと思います。例えば、ウィッグをつけたり、しょっちゅう髪を染めたりしても、もしそれを億劫でやらなくなってしまうと、それなりの歳になってしまいます。美を提案してるわけですから自分でまず実行して、少しでも提案していけるようにならなければだめだと思っています。そういう意味では、まだ努力が足らないかな。今日見えたお客様にちょっとでも喜んでいただけたら、明日につながっていくと思います」

高齢者や家族みんなの美容を考える

「化粧をすることは食べる事よりも、もっと多くの筋肉を使うそうです。化粧は鏡を持って両手を使ってします。さまざまな筋肉を使って自分ですることが脳の働きにもよくて、筋肉を使うので健康にとても良いということを福祉関係の方からお聞きしました。これもきちんと(医学的にも)お客様に伝えていかなければと思いましたね」

老人ホームなどの施設では、認知症の方がお化粧をすることで病状が回復するという実例が報告されている。実際にオムツを使用していた方がお化粧することによって、やがてオムツもいらなくなり、心身ともに元気になっていくという。

「これからのひとつのテーマは、認知症などの方たちにお化粧したりヘアスタイルを提案したりして、元気になっていただくことによって、もっともっと世の中に出ていくことができる社会に。それがその方を若くし、活力が出てくるのではないかと思います。とにかく高齢者を閉じこもらせない。一人でも多くの方に美容室に来ていただいて、ちょっと嬉しくなって元気になっていただければ、もっとどこかへ出かけたいと思う意欲と明るさにつながると思います。その方の人生も変わってくるのではないかなと思います」

また、年々美容室に来店する男性の方が多くなっているという。

「男性もお子様や奥様たちと一緒に美容室へ来店するという時代になってきています。そのようなことも考えて僕たちがもっともっと頑張って、幅広くお客様に提案していかなければならないのではないかと思っています」

福祉における美容の役目や家族で訪れることができる美容室など、河合さんの美容への思いはさらに深く未来を見据えて広がっていく。そして、常に42年前にパリに降り立った時の鮮烈な感動を忘れることなく、夢を追う青年のような眼差しが印象的であった。

(2015年11月15日取材)

「ウィズビューティーフェア」のオープニングで挨拶する河合社長

会場で演奏するミュージシャンたち

「ウィズビューティーフェア」での美容相談

会場で美容に関するさまざまなことをお客様に提案

若いアーティストを温かく見守る河合社長

パリにて(約30年前)

インタビューでパリの思い出を語る河合社長

美容師研修所のジャンポール(左)と

パリの研修所にてジャンポールと

パリの友人と(パリにて)

リンヌ・ベルタン先生。パリのヘアーショーにて

32年前に出来た、ウィズ美容室 本店

みどり野店

やな瀬店

ウィズ美容室 本店

〒321-0107 栃木県宇都宮市江曽島2-18-13

TEL:028-645-2320

ウィズ美容室 みどり野店

〒321-0136 栃木県宇都宮市みどり野町7-7

TEL:028-655-2777

ウィズ美容室 やな瀬店

〒321-0924 栃木県宇都宮市下栗1-21-5

TEL:028-614-1166